発酵してた【軽率に生きる日】

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大学生の頃いた熊本は、カフェやお店で働く女の子が可愛かった。顔の話だ。

例にもれず、学部が同じ女の子でそれはまあ可愛い女の子がいた。100人がその子を見たら98人は可愛いと言うだろう(2人くらいは目が悪い)。そんな彼女は、お人形のような目と透き通る白い肌で、はっきりと熊本弁を喋るのだけど、笑っちゃうほど性格が「サバサバ」していた。

昨今、自称サバサバ女子が流行らないことは言うまでもないが、自称なんていうレベルではない。周囲の人の悩みや逡巡を文字通りばっさりやる人であった。「片思いとか無駄!無駄だよ!」と初めての恋心にもじもじする子に時間の無駄やで!と言うタイプであり、特に「無駄のなさ」を大事にする人だったように思う。

そんな彼女を「顔はかわいいが付き合ったら大変そうだ」と勝手に値踏みしていたのだけど、一度だけ彼女にグっときたことがある。

おにぎりの話題になったときのことだ。

何人かでお昼ご飯を食べていたときに、ある子から「おにぎりはラップで包んで握るものか、素手で握るものか」という問いが話題にのぼった。

わたしはラップ派だ。わたしの手が直接白米を握って問題ないほどきれいな気がしないのだ。というのも、こんなところで表明するのは気がひけるが、わたしは多くの日本人がやってるらしい習慣のひとつである、帰宅時のうがい手洗いをしない人間だ。なぜと言われるとどうしようもないが、しないのだ。生まれてこのかた、習慣としてうがい手洗いをしたことがない。そんな自分の手で握ったおにぎり。いやもちろん握る前には手くらい洗うけど。それでも作って5分以内ならセーフ、それを過ぎたらアウトな気がする。消費期限が短め。鮮度が重要。やっぱりラップの勝利だろう。

各々意見を述べる中、最後に例の可愛い彼女が発言する。無駄のなさを求める彼女が、手が汚れるのを気にしないなんてことは当然ありえない。

たかを括っていたわたしだが彼女はこう言った。

「手で握るでしょ?お母さんが手で握ったおにぎりが一番美味しいもん」

えっ。

なにこの胸きゅん。えっ。効率重視、無駄のなさ重視なくせにお母さんの手で握ったおにぎりが一番すきなの?まじ?汚れるのがお母さんの手ならいいの?えっかわいい。えっ。

わたしの中の具沢山おにぎりが坂道を転げ落ちた瞬間であった。

その後彼女が「菌だよね、発酵してるっていうし」と発言したところで理学部的思考を感じ、彼女への胸きゅんで転げ落ちたおにぎりは見事に池に落ちた。

そしたら急に池の真ん中から女神が現れてだね…ってほど深い話にはならなかった、大学2年生の夏。

お題:坂道

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