カバーはいりません【軽率に生きる日】

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わたしは「みんな」がすきなタイプの人間で、「わたしの友達と別のわたしの友達は友達になれる」と思っている節があり、パーティピーポーと呼ばれても否定できぬ身です。だってわたしのことがすきな人同士ってかなり共通点あるよね…。

彼らがウン十年後のわたしの葬式で初めて会うくらいなら今のうちから仲良くなっててほしい。わたしの葬式では「わたしの友人」一同(友人一同、ではない)で余興を担当してほしいが、フラッシュモブは主役が死んでるので勘弁してほしい。

これくらい人間が基本的に大好きなのだけれど、大人数で同じ場所で一緒に同じ行為をするのはなんだか息苦しい。チームスポーツを例にとると、大学生で初めてハンドボールというチーム球技の部活に入ったときも、他とは少し線を引けるゴールキーパーを選んだ。フィールドプレイヤーたちがボールを追う間、勝手に指示したり勝手に「ナイスパス!」「右空いてる!」とか雰囲気で叫ぶだけであり、こっちにボールが来たら止めて投げ返すだけなのだけど、この一線引いた感じが心地よかった。フィールドプレイヤーを見ては、なぜ、常に自分の比較対象が同じ場所にいる状態で頑張れるのかしら?と不思議だった。

だからゴールキーパーの後輩が現れたときには、途端に萎縮していた。比較されることは怖い。優劣をつけられたくない。というか劣っていることがバレるのが怖い。優劣をつけないで!と逃げ回る自分は、実際には人と自分とを優劣で並べていて、だからこそ比較されるのが怖かったのだ。

特別感、はぬるく甘い。わたしは自分のアイデンティティを自分の「人と比較されようのない特別感」というぬる甘なウェハースで構築する十代を過ごして来たのだけど、自ら「特別」になろうとしていた幼い自分は、本当にぎりぎりの線の上にいたと思う。

自分の中で自分を埋没させないように、同性愛や自傷に真面目に走っていた。それが悪いということは全くなくて、今が幸せだから過去もおーるOKだと思えるハッピー人間なのだけど、結果的にいま偶然生きているだけだ、ということは理解している。あの線を越えていたらどうなっていたか。簡単に想像できることもある。

誰とも比較されにくいことを選んでやってきたのだけど、そして結果的にそれがとても楽しかったのだけど、唯一自分でコントロールできない「特別」を享受したのは、双子の妊娠だ。

腹にいるのが双子だと知って頭に浮かんだのは「一般的な母親像と比較されなくて済む」だ。ホッとした。育児書に書いてあるとおりでなくても「ま、双子だし」と思える。これはきわめてポジティブな言い訳だろう。双子妊娠を経てわたしは、優劣をつける必要のない特別感を得た。人生をぬる甘ウェハース製から木造にしたいと思えたのも、自分が自分だからこその特別感を初めて認知したからだろう。

チームはすきだ。でも、一般的な役割よりも端っこにひとりだけいるような存在でいたい。しかし目立たないままではいたくない。こういう欲求を叶える場所を自分の周りに作りたいというのが今、わたしが向かう願いだ。

これだけ、周りと一緒に同じことをしたくないと思う自分が望んで行う極めて一般的かつ集団的な行為がある。

立ち読み。本屋の立ち読み。これだけは月に三度は行いたい。非常に一般的だし集団的だけれど、買うか買わないかを問わず、やはり手にとってぺらりぺらりするあの行為は、特別だ。誰もが個室に入ったような顔をしてぺらりぺらりしているのもよい。似たものとして、TSUTAYAでどのDVDを借りるかパッケージを手に取る行為があるが、あれとは似て非なるものだ。なんというかTSUTAYAでは人目が気になってしょうがないのだ。主演芸能人がイケメンなだけの、すごくダサい映画を選んでいたらどうしよう、と思ってしまいレジに出すのも渋々だし、「過去に借りていますが」と店員に言われるのは耐えられない。これは個人の感想だが、伝わっているかい?(伝わっていないとしたら、あなたの読める言葉の拡張子とわたしの送る言葉の拡張子が異なるのだろうから、自力での解読は諦めて早々とフリーソフトをインストールするなりしていただきたい)

そう考えれば、一般的な何かの中に溶け込むのが嫌だった自分は、自分の個室に入る鍵を持ち合わせていなかっただけなのかもしれない。一般的で集団的な行為をするのも、個室の中ではなんと特別だろう。

けれど、それでもなおわたしは個室の中に入って鍵をしめたりはしたくないのだ。開けた自分でいることが第一に大切なのだ。すごくかっこよくいうと自己開示だ。

だから、気になる本のタイトルがどんなにエグくても恥ずかしくても立ち読みをするし、買うぜと思えば片手で掴んでレジに並び、堂々と店員に言うだろう。

「カバーはいりません」

家でお気に入りのやつをかけるからね!

お題:立ち読み

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